【インタビュー】SaaS型BI市場にいち早く注目!——ウイングアーク テクノロジーズ代表取締役社長 内野弘幸氏

2009年1月27日(火) 14時13分
ウイングアーク テクノロジーズ代表取締役社長 内野弘幸氏の画像
ウイングアーク テクノロジーズ代表取締役社長 内野弘幸氏
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 米ガートナーが1月中旬に発表したビジネスインテリジェンス(BI)のレポートによると、2012年までの間、上位5,000の企業ではビジネスマーケットに対して適切な決定ができない事態が生じるとしている。経済の悪化によりプランの変更や再考を余儀なくされるが、ほとんどの企業は迅速な意思決定を行うための情報プロセス、ツールをもっていない。今後は、BI予算に対して最低でも40%を割き、ビジネスプロセスを効率化するための分析に多くを費やしながら、さらに2010年までには20%の企業がBIポートフォリオをSaaSで利用するようになるとしている。

 これらBIに対する動きは国内企業でも徐々に見られるようになってきているが、いち早くBIをSaaSで提供しようとしている企業が今回登場するウイングアーク テクノロジーズだ。同社の提供する主なアプリケーションをわかりやすく説明すると帳票、入力、集計の3種類に大別される。業務に関連する請求書や発注書、見積書などの帳票を作成する「SVF」、帳票型の入力画面を自由に作成する「StraForm」、集められた業務データを集計分析して可視化するBIツール「Dr.Sum EA」だ。昨年12月には、「Dr.Sum EA」シリーズの新製品として情報を可視化する「Dr.Sum EA Datalizer MotionChart」を発表した。今回は、同社の代表取締役社長・内野弘幸氏を直撃した。

■不況でもSaaSモデルは落ち込まない

──まず2008年の環境を振り返ってみての感想は?

セールスフォース・ドットコムとの連携の話が多かったですね。我々のツールを使えばSaaSでもフォーマット化された綺麗な帳票が出せるということが認識されたと思います。ただセールスフォース・ドットコムのCRMをベースにしたニーズはどうかということを考えると、話題性はあったかもしれませんが需要はまだまだ。ほかのSaaSベンダーはどうかというと、アプリケーションが立ち上がっているところは少ないですよね。

──SaaSビジネスの現状をどう見ますか?

SFA、CRMが先行しグループウェアが後追いで広がっています。ここ数年で、ずいぶん様子が変わってくるでしょうね。業務の違いにもよるでしょうが、比較的導入しやすいのが給与の振込みからはじまる申請系の管理・評価部分。このあたりのベンダーが登場しています。ほかにはeラーニングが挙げられます。eラーニングを導入する企業では、必ずその効果についての話がでます。部門別に受講結果を出し、SaaS上にある人事の勤務情報と関連付けて測定をはじめるところもあります。

──貴社の昨年のトピックスというと何になりますか?

経済産業省のプロジェクトに参加させていただいたことです。政府は、中小企業の情報化を促進するためにSaaSモデルを想定、特に会計をベースにして税務申告まで流れるようなSaaSモデルを構想し公募しました。そのなかで、我々は会計データを単にSaaSで処理するだけではなく、経営分析のモデルで応募させていただきました。せっかく入れた会計データに対して、企業の経営者は経営分析という目線で情報を見たいわけですから。

──製品でいうと、それは「Dr.Sum EA」ということになるわけですね

はい。BIというエリアにもSaaSモデルが適用できるのではないかということは、以前から考えていたわけです。

──経産省のモデルを利用する企業数はどれくらいを想定しているんでしょうか?

ターゲットは20名以下の中小企業からで約50万社ですね。参加ベンダーとしては18社で、ほとんどが会計系です。BIという切り口で応募させていただいたのは我々だけでした。

──BIの利用のされ方は企業規模によって異なりますか?

その通りです。現実的な話をすると、SaaSで立ち上がるのは、もう少し時間がかかるのではないでしょうか? というのも、大企業の基幹データはほとんどが企業内、もしくはデータセンターに委託された企業サーバにあります。そういう情報をクラウドに展開しなくてはならないのですが、「うちのデータをクラウド上にもっていっても大丈夫か」と懸念する人も結構います。また、大量のデータを高速かつ安全にどれだけ転送できるかという技術的な課題があります。このハードルは簡単には乗り越えられませんが、解決できる問題と思っています。我々としてはオンプレミス(自社運用型)で動いている情報をSaaS BIにもってきて、「BIのSaaSモデル」を実現するというのがひとつ。あとはSaaSのなかで動いているデータを企業のなかのオンプレミスのBIにもってくるという手段もあります。大企業の場合は、BIをオンプレミスのサーバのなかに置いているため、基幹のERPのデータもオンプレミスにもってくるでしょう。SaaSのなかのデータももってきて、つきあわせをしながら企業の情報として一元的に情報活用したいというスタンスだと思います。それに対して中堅以下の企業では、SaaSでBIを使うことになりそうです。料金も月額なので運用コストもかからないですからね。

──景気が後退していますが、その影響は?

IT投資は全体的には抑えられるのではないかと思います。特に基幹系の大きな投資は抑えられますね。しかし、SaaSは月額課金なので比較的投資しやすいモデルです。SaaS案件が同じように落ち込むかというと、そうではないと思います。また大企業ではこんなケースもあります。景気後退のなかで委託倉庫の在庫を圧縮したいという企業があります。そのときにセールスフォース・ドットコムが提供しているForce.com上に委託先から在庫の入出庫の情報を入れられるアプリケーションを作り、そこにDr.SUM EAのSaaSエンジンを導入します。するとワールドワイドに分散した在庫を、そのままクラウド上でチェックしてグラフィカルに分析でき在庫圧縮が可能になります。中小企業では難しいのですが、大企業が抱えている課題に対して異なる方法での解決を提案するケースといえます。

■今年はBIのSaaSモデルが注目!

──貴社は帳票、入力、集計といった3分野に強みをもっていますが、今年の目玉は集計・分析(BI)いうところと考えられますか?

帳票が粛々と需要が増えていくのに対して、BIはまさに今年盛り上がるところであると考えています。実際にSaaSベンダーが我々のBIを使って展開したいという話がでています。何故我々の製品が選ばれているのかということ、簡単に立ち上がり、集計が早いということ。あとはビジュアルに訴えることができるので、それがSaaSモデルにあっているのです。もうひとつは、端的に言うとサーバーチャージである点がメリットですね。

──そんなにBIに引き合いありますか?

はい。ERPベンダーからの話も多いですね。今、ERPで基幹系の仕組みを立ち上げて企業運営をやりましょうという提案だけでは、経営者もなかなか投資してくれません。やはり、データを攻めの経営にどう生かすかということが分からないとメリットを感じてもらえないんです。SaaSの付加価値を上げるという意味でも、BIは重要なポジションにあるのです。我々はCRMの見える化を行っています。社内システムではeセールスマネージャーを使っています。ユーザーが日々の業務をどんどん打ち込んでいく、携帯電話でも入力できる、それはいいんですが、入力した人に結果をフィードバックしないと、入れなくなっちゃうんですね。そこで、SFAのデータをDr.Sum EAで集計し、フィードバックによって問題意識をもたせたり、人との差別化を見える化してあげる。これがDr.Sum EAがうけているところです。CRM、SFAは、見える化するところがどうしても弱いんです。

──貴社のBIツールはSaaSに向いていると?

弊社のBIチャートが有効な理由はいくつかあります。今までは、社内で静的なチャートを見ることがほとんどだったと思うのですが、それだけでは不十分なんです。弊社の製品はチャートを動的に見ながら思考ができるのです。また、サーバ側でチャートを生成するのではなく、ある要素を供給することでクライアント側でチャートを展開しているため、サーバに負荷をかけません。SaaSモデルみたいなものは、ものすごく多くの人がアクセスする世界なので、サーバ側でチャートを生成していたらとんでもない負荷がかかります。弊社のエンジンはSaaSを想定したチャートエンジンなんです。(※同社では12月、情報を可視化する「Dr.Sum EA Datalizer MotionChart」を発表した

──そうすると、Dr.SUM EAが実際にSaaSで展開しはじめるのはいつぐらいになるんでしょうか?

実験的に集計SaaSとしてははじめています。いつになるのかは具体的にはわかりませんが、SaaSベンダーが我々のBIを利用してサービスを開始するというのは、いくつも立ち上がってくると思います。

■共通の仕組みでマスター、データーの連携が不可欠

──SaaSのベンダーは、今後何をすればいいんでしょうか?プラットフォームはいくつかありますが、今の状況でいいのでしょうか?

ある大企業とその仕事を請け負っている企業間のSaaSモデルというのは、すでにいくつも立ち上がっています。こうした大企業をベースにした縦型のモデルだけではなく、業界まるごと複数の企業で立ち上がってくるモデルも考えられます。ただ、基幹系まで含めて立ち上がるには、複数のベンダーが共通で連携し合う仕組みが出来上がらないと難しいと思うんです。「うちはこういう認証を行っていますから、こういうマスターメンテナンスをしません」みたいな、バラバラの環境では企業が選択を躊躇してしまいます。やはり、シングルサインオンで共通の認証で入り、複数のアプリケーションを使っていながらもひとつのサービスのようにみえてくるようなマスターの連携やデータ連携が必要です。したがって、そういう取り組みをアプリベンダーにしてもらうと参加する企業が増えるでしょうね。

──あるベンダーのSaaSアプリに欠けているいる部分を、御社の製品が補うというモデルも考えられるわけですか?

それは有効ですよね。アプリ間の連携をテーマにしているものにはMIJS(Made In Japan Software Consortium)があります。27社が集まって製品連携を図り、マスターの連携であるとかデータの連携であるとか……、最近ではSaaSモデルを展開することによって認証を一気通貫でやろうとしているところですね。こういうのがどんどん盛り上がっていくと、SaaSへの発展につながっていくのではないかと思います。

──貴社は中国展開の話もでているようですが

現地法人を作って展開しようと思っています。中国市場は急激に拡大し、3年後には日本のIT投資に匹敵するくらいのビジネスボリュームになると予測しています。すごく魅力あるマーケットなんですね。SaaSに対してのハードルが日本に比べて極めて低いんです。またチャージの問題にしても、SaaSモデルは向いていると思います。

──中国展開で注目している分野はありますか?

BIモデルを想定しています。日系の製造業、工場などで導入されるのが現実的です。あとは物流系や金融系。ものが動くときには、それに対して情報の分析が必要となりますからね。

──BIの今後について何か考えられてますか?

今まで、BIは欧米を中心に市場が形成されてきましたが、ようやく地に足のついた市場になってきているとういう実感があります。これからは、まさに情報活用という意味でBIは広がっていくと思いますよ。我々は世界に向けて製品を出そうとしているので、ものすごくリソースを割いてますし、重要なテーマなんです。
《小板謙次》
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