ネットで売買される“トロイの木馬”〜RSAセキュリティによる犯罪レポート
「AFCC」は、RSA社の「Anti-Fraud Command Center」 (AFCC:オンライン不正対策指令センター)のことだ。AFCC は、フィッシング、ファーミング、トロイの木馬の攻撃を遮断する、24時間365日稼働の対策センターだ。AFCCは185か国以上に設置された110,000件以上のフィッシング攻撃を遮断した経験を持ち、フィッシングおよびあらたなオンライン上の脅威に関する業界の主要情報ソースとなっている。その最新号である「Vol.17」では、「オンライン販売されるトロイの木馬」という記事が掲載され、最新のオンライン犯罪の動向が紹介されている。
それによると、すでにアングラの詐欺師たちの間では、「オンライン犯罪用品の売買」は珍しいものではないという。攻撃用の堅牢なホスティング・サービス、トロイの木馬感染サービス、現金化サービスなど多種多様な犯罪サービスが流通している。犯罪者仲間のために既製のフィッシング・キットを提供するベンダーとウェブサイトも普通に存在している。そのなかで先週、RSAは新しいタイプのサービスと製品を捕捉した。トロイの木馬攻撃と組み合わせることができる、既製の不正HTMLインジェクション・キット、そしてそれを購入できる詐欺師向けのオンラインショップ「Webインジェクション・ショップで」ある。
「ウェブ・インジェクション・ショップ」は、顧客のニーズに柔軟に対応していて、ロシア人向けにロシア語のページが用意されていたりもする。価格はターゲットや注入のタイプなどによって、10USドルから30USドル程度までさまざまで、詐欺師たちは実際の画面を見ながらさまざまなインジェクション・キットを選べるようになっている。それらはWebページ全体、あるいは不正なHTMLの断片で、知識のないオンライン・バンキング・ユーザが信用情報を含むさまざまな情報を漏らすように設計されている。
たとえば、トロイの木馬 Sinowalは、トリガーリストにある膨大な数のドメインに応じて注入できる不正HTMLページの巨大なプールを持っていて、感染したユーザからさまざまな情報を収集することができる。たとえば、「取引番号」「口座番号」などの個人情報の入力を要求するフィールドを追加できるようになっている。また、トロイの木馬が注入する不正HTMLは、できるだけ違和感なく表示されるように、攻撃対象サイトのデザインや全体の流れにマッチするようにカスタマイズ可能となっている。Webインジェクション・ショップは2種類のタイプのHTMLインジェクション・キットを提供しており、1つは、ユーザに社会保障番号、母親の旧姓、PINコードなど本来必要のない情報をリクエストするフィールドを注入するページ内HTML変更型で、それぞれの金融機関が運営しているサイトのページにシームレスに混入するようにデザインされている。もう1つの感染タイプは、ユーザの(特定のPCの)ローカルのブラウザに不正なページをまるごと挿入するページ全体感染型である。こちらも、本来聞かれていない情報をユーザに入力するようにリクエストする。さらに“Balance Grabber”(残高採集者)と呼ばれる機能も販売されていたという。これはひとたびユーザが自らの銀行口座へのログインに成功すると、銀行口座の残高フィールドを探し出す不正なプログラムがそのPCのローカル環境で実行され、その口座の利用頻度、引き出し限度額まで確認するものだ。
HTMLインジェクション自体は、信用情報のような機密情報を盗み出すアプローチとしては特に目新しいわけではない。しかし、RSAにとっても、HTMLインジェクションを工業製品のように生産できる中心的存在、しかも詐欺師たちが誰でもアクセスできるように設置されたものを捕捉したのは初めてとのことだ。今回RSAが捕捉したショップはフィッシング・キットを販売している他のウェブサイトと酷似しており、このショップで販売されているインジェクション・キットは世界中の金融機関をターゲットにしていた。膨大な数の顧客から情報を盗み出すために設計されたキットを、詐欺師たちは自由にメニューから選べるようになっていたとのこと。
Monthly AFCC NEWSでは、フィッシング・キットなどと同様、いずれはインジェクション・キットも、無料あるいはわずか数ドルで流通するようになるだろうと予測している。そもそもHTMLページは比較的設計しやすいので、この見通しがはずれることはないとしている。犯罪者にとっては、より“仕事道具”を購入しやすくなるわけで、この予想はけっして明るい未来を指すものではない。今後もこれらオンライン犯罪者の最新動向について知識を持っておき、さまざまな事態を想定しておくことは大切だろう。
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