ビジネスを成功に導く3種類のSaaSソリューション——ウイングアーク 岩本幸男氏
SaaSで営業管理を行っているある企業は、案件管理をしていくなかで見積書を作成するシーンに出くわす。ところがSalesforceには見積書を出力する機能がないので、一度SalesforceからCSVでダウンロードし、個人のPCで見積書を作り直して提出している。この企業はパッケージソフトを購入するかわりにSaaSを導入、月額コストを削減した。しかし、業務効率が向上したかというとそうではなく、実際には社内でクローズしていた仕組みが外に出ただけとなっている。そればかりではなく、Salesforceと自社の間に余計なインターフェースがひとつ増える結果になってしまった。
ウイングアーク テクノロジーズの事業統括本部SaaS推進室室長岩本幸男氏は、このような事例を挙げながら、SaaS導入の課題を投げかけた。SaaSには、さまざまなメリットがあるが、実際に使ってみるとそう簡単にはいかない。
「ビジネスはひとつのアプリケーションで完結するわけではなく、複数のアプリがビジネスチェーンを繰り返し、帳票やレポートをビジネスインターフェースとして実現されている」(岩本氏)
SaaSだと導入しやすい、コストが安いということで何も考えずにアプリケーションだけをSaaSに持って行った場合には、やりとりとなる“つなぎ”の重要性を思い知る結果となる。SaaSソリューションを提供する側も、ビジネスを成功させるには“つなぎ”を考慮しなくてはならないのではないか? 岩本氏は「その“つなぎ”は、実は自社のなかであればカバーできるが、大抵つなぐところというのは関連会社であったり、取引相手だ。そこを考えて提供できないと本当の意味でのSaaSのビジネスパフォーマンスが得られない」と話す。
ウイングアーク テクノロジーズは帳票を専門にしてきた企業だ。システムとシステムの間、顧客と顧客の間は見積書や発注書など帳票でやりとりされるというのが現実のビジネス。同社では昨年、帳票SaaSとして「帳票を出す」部分の提供をSaaSで開始した。Salesforce、NetSuite、CRMのアプリケーションなどさまざまなものをSaaSで利用するときに、同社の仕組みとネット上で接続することで、帳票ソリューションを展開することができる。見積書などのデータをダウンロードせずに、そのままウェブ上での展開が可能だ。
■SaaS上での帳票展開は?
しかし、SaaS上では入力・確認画面などは日本人好みの慣れ親しんだ表示にはなっていない。普段使っている紙ベースの帳票に近いプレビューも必要だ。同社ではパートナー企業のひとつであるテラスカイと協力。帳票・ドキュメントをウェブシステム化するためのサーバ製品であるStraForm-Xをテレスカイに提供し、業務にあった入力画面をSaaSで提供していく。入力ビジネスはオプロ社とも展開する。
入力から出力までの流れはこうだ。例えばSalesforce上でウィングアークと接続することによって帳票処理というボタンができる。このボタンを押すとSalesforceからウィングアークの帳票エンジンに問い合わせがいき、顧客データに対してどういう帳票を出すことが可能かの一覧を表示する。例えば見積書、請求書のなかのどちらかを選択すると、PDF表示、PDFダウンロード、ダイレクト印刷、添付といったプルダウン形式の項目が登場する。添付では、Salesforceのフォルダに格納され、Salesforceに見積書がたまっていくので、同じ権限をもったユーザーの共有が可能。誰が最後に正しい見積書を出したかの確認も、ログと照らし合わせながら共有可能となっている(この部分は、ビデオニュース(http://www.rbbtoday.com/news/20081024/55212.html)を参照すると理解しやすい)。
■営業情報も分析も可能に
なお、見積書を提出する場合には、「今回だけ営業担当者を変更したい」「備考を入れたい」など、その時の都合に合わせた要望が発生しがちだ。帳票SaaSでは、それを編集してから見積書を作成することができる。これは営業担当者には有難い機能だろう。入力画面は、前述のようにSkyEditorと連携することにより、Salesforce上で普段の帳票に入力しているように入力できる(入力SaaS)。入力SaaSのソリューションで魅力的なのは月額7万円という価格だ。この価格は会社単位なので、何人で使っても7万円となっている。
このようにSalesforceやNetSuiteなどSaaSにたまった業務データは、BIツールである集計エンジン「Dr.Sum EA」によって分析が可能になる。同ツールは経済産業省の平成20年度中小企業向けSaaS活用基盤整備事業において、SaaS活用基盤整備におけるアプリケーションとして採択された。政府は中小企業のITを促進しようとかなりの予算をとってSaaSを推進しているが、そのなかの経営分析のアプリケーションとして同製品が採用されたため、政府のプロジェクトの中で完全SaaS化が進められている。そのため、「管理者権限などをお客様に提供せずにテンプレートを用意して使ってもらっている」状態だ。実際にSaaSで提供されるのは先になりそうだが、これが完成すると帳票を中心として分析から実際の商談まで一貫したビジネスツールの提供が可能となる。いわば、帳票、集計、入力といった3種類のSaaSツールがしっかり“つなぎ”合い、ビジネスプロセスを推進していく形になる。
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