GT-R開発責任者、水野氏に聞いた——マルチメータのログデータをメモリに読み出せれば

2008年7月1日(火) 19時32分
NISSAN GT-Rの画像
NISSAN GT-R
運転席:自動車雑誌では「コックピット」ということもの画像
運転席:自動車雑誌では「コックピット」ということも
インスツルメンツパネルの画像
インスツルメンツパネル
GT-R開発責任者 水野和敏氏:日本のものづくりやGT-Rについて熱く語るの画像
GT-R開発責任者 水野和敏氏:日本のものづくりやGT-Rについて熱く語る
スライド、ときにはホワイトボードも使うの画像
スライド、ときにはホワイトボードも使う
GT-Rのギアセレクトレバー:Dレンジから右側に倒すとマニュアルモードに切り替わるが、前に押してシフトアップ、手前に倒してシフトダウンとなる。これは、ポルシェや「ゲーセン」のシーケンシャルシフトとは逆だの画像
GT-Rのギアセレクトレバー:Dレンジから右側に倒すとマニュアルモードに切り替わるが、前に押してシフトアップ、手前に倒してシフトダウンとなる。これは、ポルシェや「ゲーセン」のシーケンシャルシフトとは逆だ
トルク配分制御、ダンパー減衰力切り替え、スキッドコントロールのスイッチの画像
トルク配分制御、ダンパー減衰力切り替え、スキッドコントロールのスイッチ
キズがつきにくい塗装:これはぜひ全車種に採用してほしいの画像
キズがつきにくい塗装:これはぜひ全車種に採用してほしい
マルチメーターの基本表示ともいえる画面。水温計、エンジン・トランスミッションの油温、油圧計。左下はアクセル開度の画像
マルチメーターの基本表示ともいえる画面。水温計、エンジン・トランスミッションの油温、油圧計。左下はアクセル開度
アクセル開度と加速・減速Gのインジケータの画像
アクセル開度と加速・減速Gのインジケータ
ブースト計、コーナリングG、燃費計、前後トルク配分などの計器の画像
ブースト計、コーナリングG、燃費計、前後トルク配分などの計器
加速計(拡大表示)の画像
加速計(拡大表示)
減速計(拡大表示)の画像
減速計(拡大表示)
舵角計(拡大表示)の画像
舵角計(拡大表示)
ギアポジションとエンジンマップインジケータの画像
ギアポジションとエンジンマップインジケータ
燃料メータと燃費計の画像
燃料メータと燃費計
ストップウォッチ画面の画像
ストップウォッチ画面
ドライブノート:メンテナンス情報やメモなどの画像
ドライブノート:メンテナンス情報やメモなど
カーナビ画面の画像
カーナビ画面
センターコンソール:シンプルで使いやすい。車の中のUIはケータイやPDAなどと違うの画像
センターコンソール:シンプルで使いやすい。車の中のUIはケータイやPDAなどと違う
 6月28日に開催された日産自動車追浜工場内テストコース「GRANDRIVE」での試乗会。GT-Rのセッションでは開発責任者である水野和敏氏の「熱い」プレゼンの後、招待されたメディアごとの試乗走行が行われた。途中で、水野氏と直接話しをする機会を得たので、そのときの情報を含めてお伝えする。

 「追浜」の呼び方は「おっぱま」だ。この研究所とテストコースといえばサファリ仕様のPA10(バイオレット)やモンテカルロ仕様のフェアレディZなどの開発やセッティングを手がけていたことで有名だ。

 水野氏のプレゼンは、GT-Rの発表時に使用されたスライドをベースに行われた。すでに各自動車関連メディアがさんざん伝えている内容なので、ポイントだけに絞ったものだったが、ときにはホワイトボードの図解など交え、内容はかなり熱く、日本のものづくりや車という「資産」の考え方、設計思想などを語ってくれた。ここで、それをあらためてまとめるのはRBB TODAYの役目ではないと思うので、写真とトピック、そして水野氏に聞いたGT-R情報を紹介しよう。

 まず、プレゼンの中で面白かったのは、GT-Rのエンジンとミッションは専用の工場で12人の専門のスタッフが1台ずつ手作業で組み立てているとのこと。このため、GT-Rでは、じつは品質は均一でなく、職人が熟練していくほど精度があがっていくという。これは、通常のエンジニアリングやライン生産の考え方を否定するものだが、これこそが日本のものづくりの原点ではないかとのことだ。もちろん、品質のばらつきがマイナス方向にでないように、組みあがったエンジンなどの出力検査などは全数行う。サンプリング検査などありえない工程だ(エンジンについては)。また、車は年数が経つほど減価償却的に価値が目減りしていく。一般に3年で60%前後の価値になってしまうが、GT-Rは3年後の価値の目減りが少なく、残価設定が可能な「リース」の発想が可能だとしている。たとえば、写真は、小さいナットを車の塗装板金に射出したときのキズのつき具合だが、GT-Rの塗装はキズがつきにくい。エンジンやメンテナンスの無料補償もランニングコストでみた価値も高めてくれる。すべてに適用できるわけではないが、このような発想の転換は、アジアなど新興国が市場で台頭してくるなか、日本独自の生き残りの施策として、差別化のために重要との考え方だ。

 GT-Rといえば、そのレーシングカーのようなスペックだけでなくITに関係の深い装備もある。通常カーナビとして使うモニタ画面を使った「マルチモニタ」だ。業界なら「データロガー」のディスプレイといえばわかりやすいだろう。競技車輌の場合、タコメータ以外に油圧計や過給器の圧力計(ブースト計)、その他電子制御部分の計器などが個別のメーターとして取り付けられるが、最近の航空機のマルチディスプレイよろしく各種センサー情報を画面を切り替えて表示できるものだ。

 表示できるデータは、油温、水温、アクセル開度、ステアリング角度、横G、加減速Gなど多岐にわたる。これらを表示するだけでなくロギングするデータロガー機能も持っている。記録されたデータは、現状ではメンテナンス用に利用されるものだが、このデータをユーザーに解放しないのか水野氏に聞いてみた。一般ユーザーがこれらのデータをどのように使うのか、という疑問もなくはないが、ログデータを携帯やPCに転送できれば、コミュニティやサービスなどの幅が広がることは確かだ。

 この質問については、そういった要望はすでに各所からいただいているので検討している。現状ではなにもコミットできないが、とにかく待っていてほしい。との返事だ。

 一定のログデータがあれば、ネット経由でドライビングや車の状況を診断してもらうこともできるし、長期的なモニタリングによって、ショックアブソーバ、タイヤ、ブレーキなど特定部分の最適なメンテナンス時期を知らせることもできるだろう。サーキット走行などではオーナーどうしの情報交換やドライビング分析など、コミュニティの輪が広がるかもしれない。ぜひ、前向きに進めてほしい機能だ。

 プレゼンでは、職人がエンジンを1台ずつ手作りしているとのことだったので、生産がおいつかないのではないかとの質問もしてみた。返事は、もちろん間に合っていないとのことだ。現在注文しても納車は3年待たされる状態だという。それでも製造工程を変えることはない。プレゼンでの話に戻るが、それがGT-Rの価値につながっているようだ。実際、アラブの王族からは、特注仕様のGT-Rを400台受注しているとの話をしてくれた。当然分納になるし、海外では1200万レベルの価格になるが、それだけ価値を認められているからだろう。

 最後にGT-R試乗の感想をひと言述べさせてもらうとしたら、加速については旅客機の離陸G以上のGが体感できる、とだけいっておこう。
《中尾真二》
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