【ショートコラム】日本はガラパゴスじゃなかったの?

2008年6月25日(水) 20時17分
 ここ数日、IT系メディアをにぎわすiPhone 3Gだが、重要なポイントを指摘する記事は少ないようだ。

 GSM iPhoneのときは、キャリアの料金収入の一部をアップルとシェアするという販売条件が取り沙汰された。iPhone端末を販売する携帯電話キャリアは、通話や通信料の収入の一部をアップルに支払わなければならないという。もちろん、AT&Tもアップルもこれについては公式にはなにもコメントしていない。今回iPhone 3Gでは、この販売契約方式をとらず、キャリアはアップルに対して端末1台あたり一定の金額を負担しなければならないという。今回、iPhone 3Gが大幅に値下げされた要因として、22カ国同時発売などによる部品の一括調達などが挙げられるが、それだけでなく、実際にアップルがキャリアから受け取る金額は、199ドルや299ドルに300ドルとも報道がある金額が上乗せされる。もし本当だとすれば、これは、いわゆる「端末奨励金」のことではないか。

 ソフトバンクの場合は、スーパーボーナス方式により、実質負担はアップル発表の金額に近いものになっているが、理屈の上では、iPhone 3Gを一括払いで購入すると7万〜8万円が必要だ。その後2年間は通話料などから特別割引が適用され、最終的には3万円前後の実質負担という考え方だ。

 ところで、この端末奨励金だが、日本では総務省の指導のもと昨年から国内キャリアは見直す方向でいる。理由としては、キャリア主導の閉鎖的なシステムが国際競争力を損ね、世界市場から孤立する。ユーザー視点からすると、結果として頻繁に端末を買い換えるユーザーの奨励金相当の部分を何年も同じ端末を使い続けるユーザーも負担していることになり不公平だ。などが挙げられる。

 アップルがこのシステムをどこまで精査したかは不明だが、ランニングで収入をシェアするGSM iPhoneでのシステムより、前払いで高額な端末代金を受け取れる奨励金方式を選んだことは、少なくとも総務省にとっては皮肉に映るかもしれない。国際競争力をつけるため、ガラパゴスにしないため、ユーザーのため、として否定した方式が、グローバルスタンダードの代名詞のように思われているアメリカの企業によって評価され、採用されてしまった。

 もちろん、端末奨励金がアメリカに根付くとは限らない。国によってはアップルの発表金額と実売価格の差をユーザーが嫌うかもしれない。キャリア主導の日本の奨励金と違い、メーカーによる価格操作の側面を厳密に評価すると公的機関が動く可能性もゼロではない。とはいっても、アップルの販売条件と日本の端末奨励金はまったく別のものだ。発生の必然や背景が異なる。ソフトバンクにおいては、もともと端末奨励金を嫌って割賦販売方式をいち早く導入した経緯もある。結果としてアップルの条件とソフトバンクのスーパーボーナス方式の価格に見せ方が一致しただけという考え方も可能だ。あるいは、アップルは端末奨励金を逆手にとって、日本でのキャリアとメーカーの関係を逆転させる方法を示したともいえる。さらにいえば、ビジネスとしてこんな「おいしい」システムを採用しない手はないとアップルは判断しただけなのかもしれない。

 結局のところ、グローバルスタンダードとは日本の閉鎖性や後進性の反語としての文脈で使われることが多いが、それは必ずしも「世界にならえ」ではないということを、この一件は暗示しているように思う。
《中尾真二》
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