WiMAXより有利? 周波数効率と指向性制御が次世代PHSの強み——ウィルコムの2.5GHz帯戦略
研究や開発中の通信技術をテーマにした総合イベント「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2008」にて、ウィルコム取締役常務執行役員ネットワーク技術本部長の平澤弘樹氏が明らかにした。
最大で下り20Mbps/上りも20Mbps、マイクロセルによりネットワークの混雑がしにくい、現行のPHS基地局が活用できるためエリア展開が早い、現行のPHSとのデュアル端末により全国で利用できる。これが次世代PHSの利点だ。
次世代PHSの開発を始めたのは2006年1月で、WiMAXと比べると日が浅い。しかし、現世代PHSの高速化はウィルコムが独自に開発をしており、このノウハウが生かせるため「それほど大きなハードルはない」とする。
同氏は、「次世代PHSを開発する上で、WiMAXのチップをいくつか流用した」という秘話も明かした。次世代PHSとモバイルWiMAXの共通点はいくつかあり、物理層が「OFDM」、使用する周波数帯が2.5GHz帯という点だ。そのため、WiMAXの部品や技術も取り入れているということだ。
しかし、なぜウィルコムはモバイルWiMAXではなく、次世代PHSの採用を決めたのだろうか。それは、「マイクロセル」と「指向性」の問題だ。モバイルであっても最大20Mbpsのブロードバンドであれば、従来と比べると扱うデータ量が飛躍的に増加する。「次世代PHSでは、1人あたり月間5Gバイトと推測される。コストを安くネットワークを構築しつつ、周波数効率を上げなければならない」と課題を挙げた。
「周波数効率を上げるには、いろいろな技術があるが1.2倍とかその程度」と切り捨てたうえであげたのが「マイクロセル」だ。携帯電話やモバイルWiMAXは、1つの基地局で半径数kmをカバーする。しかし、PHSのマイクロセルでは数百メートル。「半径を10分の1にしたら、100倍の容量が得られる」とその効果をアピール。「どこでもブロードバンドができ、スループットが落ちないためにはマイクロセルが重要である」と改めて強調した。
スループットを落とさないための対策として、現行のPHSでは「都市部では10メートルに1個くらいの基地局を置いている」というほどの密度で展開する。実はウィルコムも当初は基地局をこのような密度で設置するとは想定しなかったようで、「ここまでアンテナが必要と思っていたなら、事業をしていなかったかもしれない」との発言があった。
次世代PHSの基地局だが、主に現行PHSの基地局に併設をする形を取る。トラフィックが多い地域では、すでに基地局のバックボーンを光ファイバーに置き換えており回線容量の問題はない。アンテナも現行のPHSのものをそのまま使う。現行のPHS基地局に、次世代PHS用の機器を追加するだけだ。「10年間かかって置いていったアンテナ。この資産を使ってできるのはうれしく思っている」と自信を見せる。
現行のPHSでは、「アダプティブアレー基地局」を採用している。これは、基地局からの電波の指向性を端末に向けることで、隣り合った基地局でも同じ周波数が使えるという技術。これをさらに改良したのが「空間多重技術」。同じ基地局で、違う端末に向けて同じ周波数が利用できる。この2つの技術を使って、周波数帯域を有効に活用している。
ウィルコムでは、次世代サービスでもスループットの低下を防ぐため周波数帯域の有効利用が必要と判断。それにはアダプティブアレー基地局や空間多重技術などを採用する必要があるため、指向性が細かく制御できなくてはならない。しかし、「WiMAXは指向性を向けることができないというのが結論」として、ウィルコムが開発した技術を取り入れた次世代PHSの採用を決めたとしている。
総務省に提出した計画では、2009年4月に山手線内で試験サービスを開始、10月には首都圏/中部圏/関西圏/県庁所在地で本格サービス、2010年度には全国主要都市、2011年度には人口カバー率を50%に、2012年度には90%に広げるとしている。しかし、「のんびりと展開していると、競争に勝てない。実際には前倒しをして展開をする」との発言があった。現行のPHSに併設するとの説明があったため、説得力のある発言だ。
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