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地域バンドのWiMAXが地域社会を支える!? アンワイヤードインターネットは地方格差是正の起爆剤か?

2007年10月26日(金) 23時50分
ユビキタス研究所フォーラムの画像
ユビキタス研究所フォーラム
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 次世代移動通信の有望技術として注目を集めるWiMAXだが、世の中は全国バンドの周波数免許をめぐる4グループの争いに注目が集まりがちだ。しかし実はWiMAXが使える周波数として市区町村単位に交付される10MHzの地域バンドが確保されている。地域バンドの免許は、年内にも申請の受付が始まると言われている。10月24日に開催された「ユビキタス研究所フォーラム〜無線ブロードバンド化と地域社会〜」(主催:IRIユビテック)では、この地域バンドに焦点を絞りWiMAXの地域での活用に対する有識者の講演が行われた。

●「アンワイヤード」を支えるインターネット技術が進化

 基調講演に登場した慶應大学環境情報学部専任講師の湧川氏は、IETFでモバイル系のRFCの作成に積極的に参加している。湧川氏によると、モバイルIPなどのプロトコルは2〜3年前には開発を終えていたが、一般には普及はしていないという。しかしインターネット利用が中心の目的としたWi-FiやWiMAXの登場や、携帯電話でのインターネット接続の普及に従って、今後は急速に利用が進みそうだという。

 WiMAX Forumや3GPPなどの無線システムの団体からのIETFへの期待も高まっており、数多く存在するモバイル系のRFC(MIP6、NEMO、Monami6など数多く存在する)を統合化するMEXT (Mobile IPv6 EXTensions)や、ネットワーク側でモビリティの制御を行うNETLMM(Network-based Local Mobility Management)のWGの活動が始まっているという。また、WiMAX特有の課題を検討するWGである16ng(IP over IEEE 802.16 Networks)では、今後、放送的なサービスへ活用できるMCBCS(Multicast Broadcast Service)への対応が焦点になるだろうとの事である。

 湧川氏の所属する慶應大学ではすでにオープン無線プラットフォーム・ラボを設立しており、インターネットのようなオープンな地域型のWiMAXネットワークを実現するための具体的な技術課題を解決していくという。すでに藤沢市やイーアクセスとともに実験を開始しており、最初の成果は11月にも論文として公開する予定だ。

●地域の実情と無線ブロードバンドへの期待

 招待講演に立った岩手県の岩間主事はブロードバンド整備率が86%(全国46位)と厳しい状況にある同県でブロードバンドゼロ解消の最前線に立っている。一都三県の合計より面積の大きな岩手県は、北上山地と奥羽山脈を抱えているため、全世帯の10%にものぼるテレビ難視聴地域の対策のためにこれまで巨費を投じてきたという。

 岩間氏によると、デジタルディバイド対策は「ブロードバンド」「地上デジタル放送」「携帯電話」の3つを複合的に行う必要があるという。特にブロードバンドは地デジや携帯電話と比べて住民ニーズが顕著ではないために整備費の確保に苦労するとの事である。いまや地方自治体の財政は厳しく、設備に振り向けられる予算は10年前の1/3しかないため、岩手県のブロードバンドゼロ地域の解消をFTTHで実施した場合に必要となる320億円(試算値)を確保することはとても困難であるとのことだ。

 これからのデジタルディバイド対策は、公共施設や自治体が保有する光ファイバー、携帯電話の鉄塔などの既存設備と、進歩した無線ブロードバンド技術を使って徹底的にコストを抑える必要があるという。試算によると既存インフラとWiMAXを活用してブロードバンドゼロ対策を起こった場合、設備費用は30〜50億円(試算値)に抑えられるという。

 岩手県では市町村情報化サポートセンターを設置して、市町村のデジタルディバイド対策を支援している。また総務省は「デジタル・ディバイド解消戦略会議」を開催し、全自治体が各地域の実態を詳細に調査している所だという。とはいえ、人口が減少する中で、疲弊する地方自治体がデジタルディバイド対策やブロードバンド整備を行うには、コンパクトシティや限界集落の議論、および国土保全の観点などのブレークスルーが必要とのことだ。

●日本無線がWiMAXの開発計画を発表

 日本無線は言わずと知れた無線機器の老舗メーカー。登壇したBWAプロジェクト担当部長の小林氏はWiMAXの製品化を担当している。注目される2.5GHzのWiMAXだが、地域バンドは1chに限られているため、高いビットレートを確保したり連続的な無線エリアを提供するには、26GHz帯のWIPASや、25GHzの小電力通信装置、4.9GHzのWi-Fiの利用を検討する必要があるとのことだ。

 同社は小型一体型のモバイルWiMAX基地局の開発を進めているという。全国バンドの事業者が議論しているASN(Access Service Network)Profileについては、ルーラルや固定システムに適したProfile Bと、都市型のモバイルシステムに適したProfile Cの両方に準拠するという。

 国内でのWiMAXは地域バンドと全国バンドを利用する事業者が個別に提供することとなるが、両者の基本的なインフラ構成はWiMAX Forumの規定に従っており同等のものとなるという。そのため義務化されているMVNO(Mobile Virtual Network Operator)への開放を活用すれば、利用者は両者のサービスを融合して利用する事ができる可能性があるとの事である。

●地域免許のとり方と使い方

 IRIユビテックの椋野氏は、ネットワークインテグレータの立場から、目前に迫る地域バンドの交付に向けての実践的な解説を行った。免許の取得にはサービスの必然性がある事はもちろんだが、他のシステムとの干渉回避やシステム同期などの技術的な課題をクリアする必要があるという。そのため、申請にあたっては、基地局の設置計画、利用目的に適した機材の確保、これらを実施するための体制作り、地方自治体との事前調整が必要とのことだ。

 課題となっているWiMAXサービスの事業性については、世界的に期待が高いWiMAXではあるが、当面のアプリケーションはインターネット接続に限られるため、段階的な拡大が得策であり、ネットワークの拡大に併せて、公共的なアプリケーションを重畳していく手法が現実的だとした。さらに「無線IPネットワーク」という広い視点で考え、WiMAXに拘泥するのではなく、適材適所で無線方式を選択すべきであるという考えを示した。

●地域社会とアンワイヤードインターネットは連携するか

 「組織や個人がネットワークを開放する事で発展してきたインターネットが“アンワイヤード・インターネット”となって全地球をカバーする」。この壮大なビジョンはIPをサポートする無線ブロードバンドとモバイル系プロトコルの開発が進み、技術の準備は整っている。製品の開発と供給もとても順調だ。

 しかし“アンワイヤード”に至るには、1)巨額のマネーや利権が絡む周波数の確保、2)一般的には経済合理性を欠く地域へのインフラ投資、3)既存の通信事業者の事業モデルの転換、といった複雑な課題が待ち受けている。今回のユビキタス研究所フォーラムは、日本国内で残る難題であるインフラ設置のコスト負担と事業モデルの課題を明確に示すものとなったようだ。

 地域単位の無線ブロードバンドが地域を活性化する具体的な根拠はまだないが、確かにその可能性は感じられる。米国を中心とした自治体無線ネットワーク(Municipal Internet)の試行錯誤を経て、今度は日本が産官学の知恵を合わせてその解を見つける番なのかもしれない。(干場久仁雄)
《RBB TODAY》
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