Second Life進出までの道のり——オリックス不動産に聞く(2) | RBB TODAY
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Second Life進出までの道のり——オリックス不動産に聞く(2)

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オリックス不動産・住宅統括部の永井哲也氏(右)と佐藤理恵氏(左)
  • オリックス不動産・住宅統括部の永井哲也氏(右)と佐藤理恵氏(左)
 「なぜ企業がSecond Lifeに進出するのか? オリックス不動産に聞く(1)」に続き、オリックス不動産で今回のセカンドライフの仕掛け人、住宅統括部の永井哲也氏、佐藤理恵氏らに話を伺った。

◆セカンドライフ進出! 社内の理解を得るには?

----実際の制作は協力会社が担当するとして、御社の中でこのプロジェクトに関わる方は何人くらいいらっしゃるんですか?

永井氏:私たち二人だけです(笑)。

佐藤氏:あとは、各物件の担当者と調整してという形になります。

----なるほど。お二人がプロデューサーさんですね。御社の中でセカンドライフに最初に注目されたのは誰ですか?

永井氏:私です。面白いな、と思って、今年の2月にはここで何かやろうと考え始めました。

----早いですね。2月というとまだクライアントに日本語が追加されていない時期ですね。日本でもあまり注目されていなかったというか。

永井氏:そうですね。

----ピンと来たわけですか?

永井氏:新しいな、とは思いました。

----これほど日本で話題になると思いましたか。

永井氏:当時は思っていなかったですね。

----それを会社でやろうとした理由は何ですか。

永井氏:新しいからです。それ以外にはないと言っても良いですね。新しいWeb媒体だという感覚でした。

----この時はほかにSNSなどほかにもインターネットの新しいメディアがありましたが。ユーザーの多さから見て、セカンドライフで冒険するよりもこちらのほうが効果がありそうでしたが。

永井氏:そうですね。SNSで何かできないか、という検討もしています。ただ、SNSを広告媒体として使う手法はもう出し尽くされてしまって、新しいとは言えなくなっていました。新しいことをしたい。ORIXグループのテーマが「ほかにはないアンサーを。」ですから。4月ぐらいには仕事としてまじめに調査し始めました。

----なるほど。新しい、が大切なんですね。4月といえば、そのあたりから日本の企業の進出がニュースになり始めましたね。

永井氏:はい、私も焦りました。ライバルより先にやらなくちゃいけないと。

----セカンドライフといえば日本ではまだ先進的な題材で、これでビジネスをするというと社内から理解を得るもの大変だとは思います。ベンチャー企業なら社長の鶴の一声で、というのもありだと思いますが、大企業ではなにかと難しそうです。そのあたりで苦労されたことはありませんか?

永井氏:うちはそこはいい会社で(笑)。意思決定は早いんですよ。マンション業界ではほかの大手さんも検討されているとは聞いていますが、費用対効果の出ていないものについては時間がかかると思います。その点、オリックス不動産では“検証する”という形でスタートできました。決断は早かったですね。

----セカンドライフのプロジェクトをやろう、という発起人はどなたでしょうか。

永井氏:私です。

----宣伝の担当部門ではなく永井さんですね。部書は住宅統括部だそうですが、ここは本来、どんな業務をされる部書ですか。

永井氏:うーん、いちばん答えが難しい質問です(笑)。オリックス不動産には土地を仕入れて、マンションを企画して販売するという部門が1部、2部、3部と3つあります。さらにそれぞれの部門が企画したマンションの設計と建設の管理をする部門かあります。これら4つの部門の本部機能が住宅統括部です。ここの物件のプロモーションについてはそれぞれの部書が行いますが、たとえばネット広告や不動産情報サイトに当社の物件をすべて載せましょう、という時のまとめ役は私たちになります。そのほかには全部署に統一の決めごとがありますね。たとえば契約書の書式を統一しましょうとか。そういう仕事です。

永井氏:宣伝部の役割ということでいいですか。

----マンションに関してはそうですね。ほかにもオフィスビルとか、ゴルフ場などの部門がありますが、私たちはマンション専門です。

----オフィス部門の人々はセカンドライフに注目していますか。

永井氏:やりたがっているみたいですね。調整しきれていませんが。ブルーミングタワーかオリックス島の中でオフィススペースを設けて、入居会社を募集するかもしれません。

----それは楽しみです。グループ活動をしている人たちにも、本拠となる部屋が欲しいという人は多いと思いますよ。セカンドライフ進出への意思決定の速さについてですが、オリックス不動産ではこの案件について最終的な決裁は誰でしたか。

永井氏:この件では専務取締役でした。

----セカンドライフはすぐにご理解いただけましたか。

佐藤:説明するに当たって、実際に専務にセカンドライフを見てもらいました。セカンドライフの代表的な島やできることなどをひととおり説明しました。プレゼンテーションルームの大きなスクリーンだったせいか、感想は「酔った」でした(笑)。

----そうでしょうね。そして見ただけでは理解は難しい。

永井氏:見てもらうだけではなく、事業プランや実際のマンション販売との連携などの大枠、効果測定の方法などもすべて説明しました。オリックス不動産では、現在35の物件が進行中で、それらの物件を販売していくうえで、いつ売り出すのか、特に売らなくてはいけない時期はいつなのか、そういうタイムスケジュールがあって、そこにセカンドライフのプロジェクトがプロモーションの役に立つ、という部分を説明しました。秋の販売シーズンには100戸プレゼントして、次の予定は1月に……というぐあいです。

----なるほど、リアルなマンションを売るうえで、セカンドライフはこう役に立つんですよ、という部分をプレゼンテーションされたんですね。

永井氏:そうです。

◆広告効果測定はどうなる?

----広告効果については御社で独自に効果測定をするしかなさそうですね。

永井氏:はい。もっとも、日本人のユーザー数は増えていくと思いますし、日本語化の進捗次第で流行ると思います。オリックス島の看板からWebサイトのリンクを貼っているので、そのヒット数を見ると、かなりの数のアバターに、オリックス島に来ていただいているようです。でも、まだまだこれからですね。

----効果測定も含めた取り組みとのことですが、オリックス島は何年くらい保有するつもりですか。

永井氏:プロジェクトの結果を出すには3年くらいやってみないとわからないと考えています。効果測定については日単位、月単位で追っていきますから、もっと早く効果アリと結論が出るかもしれません。

----効果測定はどういった方法なのでしょうか。

永井氏:当社の場合は現実の物件販売への影響度、となりますね。セカンドライフからWebサイトへのヒット数や資料請求、セカンドライフをきっかけとしてモデルルームに足を運んでくれた人、物件を購入してくれた人、それが私たちの求めている数字です。

----効果がなかったと判断する基準はありますか?

永井氏:もちろん、期待したとおりの効果がない場合もあるでしょう。ただ、今月ダメだったから来月は終わり、という判断ではなく、長期的にセカンドライフというメディアと付き合っていこうと考えています。そのための期間として3年は見たいですね。新しいメディアだし、先鞭を付けたわけですから。

----実際に公開してから間もないですが、ヒット数は増えていますか?

永井氏:プレスリリースを出してからは100件単位で増えています。

----今後のことですが、今回、多くの人たちが勘違いをしていた、セカンドライフ内でオリックス不動産のマンションが買える。そういうサービスは今後可能性はないのでしょうか。

永井氏:社内でセカンドライフに対してどう取り組むかというと、ビジネスか広告かの2つなんですね。それで私たちとしては広告をやっていくと決めました。ビジネスとしてやっていくという検討もしましたが、それはやはり今後の日本でセカンドライフがどう動いていくかを注目する必要があります。

オリックス・社長室広報グループの石井耕平氏:オリックスグループとしては、ほかの企業もセカンドライフに注目しています。今後は土地を買い足していくことも考えています。たとえばオリックスには自動車部門があります。リースやレンタカーですね。野球などもあります。そうした会社がショールームやアトラクションを作ることもあると思います。ただ、BtoCの試みの中で、セカンドライフで直接的な利益を上げることは考えていません。

永井氏:意外だったのは、業界の人からいろいろ言われましたね。「オリックスさん、セカンドライフに土地買ったんだってね」と。

----“セカンドライフ現象”に注目している企業としては、ライバルがどんな方法で儲けようとしているのか気になるんですよ。でも、オリックス不動産はセカンドライフで直接儲ける気がない。これは意外な答えだと思いますよ。

永井氏:私たちがセカンドライフでどんな活動をしているかはすべてWebで発表していくつもりです。セカンドライフをまだ体験していない方もぜひWebサイトをご覧ください。


 いままでのネットカルチャー、たとえばWebやSNSはユーザーが盛り上がって、あとから企業が活用し始めた。しかしセカンドライフは企業先行型になっている。その様子を指して、企業ばかりが熱くなり、ユーザーが醒めているという見方も多いようだ。しかし、今回のお話を伺うと“広告の新媒体”“3Dで見せたい”“現実のビジネスとのリンク”などのキーワードが得られる。企業の“セカンドライフ現象”は、広告表現方法を模索するという意味では自然な流れだと言えそうだ。
《杉山淳一》
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