「電子メールは使われすぎている」 -電子メールとSendmailの生みの親 エリック氏

2006年11月21日(火) 23時41分
Sendmail社 CTO エリック・オールマン氏の画像
Sendmail社 CTO エリック・オールマン氏
初期のARPANETはわずにこれだけのネットワークしか接続されていないかったの画像
初期のARPANETはわずにこれだけのネットワークしか接続されていないかった
現在のインターネットは文字通り世界を覆い尽くすまでにはその広がりを見せているの画像
現在のインターネットは文字通り世界を覆い尽くすまでにはその広がりを見せている
1969年のARPANET誕生以来、ネットを利用する人口は急速に増えている。とくにCIX登場以降1994年あたりからの人口増加には目を見張るものがあるの画像
1969年のARPANET誕生以来、ネットを利用する人口は急速に増えている。とくにCIX登場以降1994年あたりからの人口増加には目を見張るものがある
 21日、「SendMail」の誕生25周年を祝い、米Sendmail社は創始者であり、オリジナルプログラムの作成者でもあるエリック・オールマン氏によるセミナーを開催、BSD OSやSend Mailに関わるこれまでの半生と今後の電子メールについてのプレゼンテーションを行った。

 いまや電話にも匹敵するコミュニケーション手段として活用されている電子メール。その電子メールの生みの親とまで言われるのがエリック・オールマン氏だ。では、なぜ彼はそのように呼ばれているのだろうか?

 コンピュータ上ではじめて電子メールの原型が誕生したのは1971年のこと、Ray Tomlinson氏によってであった。電子メールに使われている「@」の記号を、このときにすでに使っており、電子メールのコンセプトや実装に大きな足跡を残している。そのRay氏ではなく、エリック氏が生みの親とまで言われるのは「Sendmail」というプログラムを彼が作ったからにほかならない。

 よく知られているように、インターネットの母胎となったのはアメリカ軍によるARPANETプロジェクトだ。エリック氏はこのARPANET上で電子メールを扱うためのソフトウエア「delivermail」を開発、その後カリフォルニア大学バークレー校在学中の1981年にSendMailを開発した。SendMailは標準化されたSMTPに素早く対応、1982年にリリースされたBSD 4.1aに搭載され、この後多くのUNIXシステムで利用されるようになる。ARPANETが政府の研究用途から解放され、インターネットとなり、一般の人々の目の前にようやくその姿を現したとき、多くのサーバーで電子メールシステムを動かしているのはエリック氏が創ったSendmailシステムだったのだ。もちろん現在でも多くのUNIXベースのシステムでSendmailは動作しており、その数は100万システムを超えるともいわれている。このため、彼は電子メールの生みの親と呼ばれているが、本人は「生みの親はRay氏である」と謙遜した言葉を残した。

 後にサン・マイクロシステムを立ち上げるビル・ジョイ氏、現在のGoogle社の会長兼最高経営責任者であるエリック E. シュミット氏などとバークレイ校において交流を重ね、BSDシステムの開発とSendmailの開発を行ってきた彼は、フルタイムでSendmailの開発とサポートを行うためにSendmail社を立ち上げた。現在Sendmailは製品版のほかに、オープンソース開発版が存在し、現在でも自らが開発の任に当たり、コードを自身で書くこともあるという。

 コンピュータ業界にあって巨人の一人に数え上げられるエリック氏ではあるが、この25年間の間には多くの転機が訪れたと回想する。電子メールにとって大きな転機となったのはコンピュータウィルスの登場と、スパムメールの登場だ。電子メール上で最初のスパムが確認されたのは1978年5月のこと。DEC社による広告メールであった。当時はまだ研究用として隔離されたARPANET時代であり、このメールは大きな問題を引き起こした。1988年には大規模なワームの被害が起こり、この後コンピュータウィルスはその数を増やしていくことになる。

 1983年よりARPANETはその性格を現在のインターネットの形をとるような変革がおこりはじめ、1986年に軍事用のARPANETから分離するかたちで本格的な世界ネットワーク「The Internet」としての形を取るようになった。1991年にはアメリカにおいて商用のインターネット接続プロバイダの特にCIX(Comaercial Internet eXchange)の登場により、多くの人々がネットに参加するようになり、1994年にはインターネットを堂々と商用利用するスパムメールが登場するなど、ネットの性格が学術用とから商用利用へと大きく変化していった。

 エリック氏は、「今後もネットの利用は増えていき、電子メールの需要も増えていくだろうが、現在でも電子メールは使われすぎている」と苦言を呈した。「私は、電子メールのシステムを作ってきた人間だが、こんなことは無くなって欲しいと思っている。たとえば、隣のブースにいるのに、要件を電子メールで送ってしまうといったようなことです。電子メールのやりとりで議論することもあるでしょう。でも、実際にあえば15分で済んでしまうしまようなことを延々とメールでやり合うことがある。このようなバカげたことはやめましょう」と述べた。

 今後の電子メールの状況に関しては「WWWの世界のような大きな変化は訪れないだろう」としている。ただし、「システム上のメールプロトコルはさらなる進化が期待されるし、それによってスパムやフィッシングへの対策も容易にできるようになるかもしれない」と結んだ。
《黒澤利男》
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