冒頭の基調講演で、インターネット総合研究所の藤原洋所長は、現在の「IT不況」はIT不況ではなく「IT生産不況」であるとして、現下の情勢でも、企業のほとんどが旺盛なIT予算を確保していることをあげ、今なおIT産業が成長産業であると述べた。その上で藤原氏は、ユビキタス化するインターネットでは、従来のようなアメリカ主導ではなく、日本を含めたアジアが主導的な役割を果たしていくことが必要だと述べている。これは、日本や韓国、中国のブロードバンド人口が世界の中で最大規模になることをふまえたもの。
また、通信行政の側からは、総務省総合通信基盤局 電気通信事業部の鈴木康雄部長が講演を行い、2005年度末には高速・超高速インターネット接続が約2,000万世帯に提供されるという見通しを示した。これはいわゆるe-Japan戦略の「5年以内(2005年末まで)に3,000万世帯」という数字には届かないものの、日本全国の4千7百万世帯からすると4割を超える数字だ。
光ファイバ(FTTH)については、2002年度末に100万世帯に近い普及を見込んでおり、その後もおよそ200万世帯/年の増加を予測している。この予測では、2005年末にはFTTHがブロードバンドの主流になるとみており、電力系FTTHサービスが本格的に動き出せば、競争が活発化することで確かにこの数字は可能と思われる。(下の表は昨年おこなわれた算定のため、DSLは2001年度末予測を実数がすでに上回っているが、傾向は見て取れる)。
2001年度末(予測) | 2005年度末(予測) | |
DSL | 164万 | 695万 |
FTTH | 7万 | 773万 |
CATV | 205万 | 429万 |
FWA(無線) | 2万 | 80万 |
このほか、ブロードバンドアクセスの地域格差の解消のために、地域イントラネット基盤施設整備事業として積極的に地域を支援していることを説明し、民間が行えるエリアは全面的に民間に任せた上で、条件の不利な地域については国や地方公共団体による整備をおこない、2005年度までに全国整備の目標を達成したいとしている。
さらに、IP電話の本格的な普及のために、現在は第一種電気通信事業者のみに割り当てている「電話番号」を、一定の通話品質を確保していることを条件に第二種電気通信事業者に対しても割り当てるほか、IP電話サービスの相互接続性を確保するための方策を検討中だと述べた。
このIP.net JAPAN 2002 ブロードバンド・ソリューション展は、3月1日まで横浜市のパシフィコ横浜で開催されている。展示会は10時〜17時30分(最終日は17時まで)。